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はなちゃん

2009年07月12日/ リレーエッセイ


  はなとの出会いは三年前の梅雨の時期。
 当時小学生の娘が小雨降る中傘をさし、友達の家へ遊びに行くと家を出て、5分程で戻ってきた。近くの畑にあるダンボール箱の中で、小さな犬が箱の隅に頭を押しあてて、前に進もうとキャンキャン鳴いている、多分目が見えないんだ、とのこと。私も一緒にその箱をのぞきに行くと、どろんこまみれの、片手でも十分な程の小さな犬が1匹。
 とりあえずどろを洗ってミルクをあげようと、二人と1匹で家に戻った。洗面器にお湯をため何度か水を入れ替えてもどろがおちきれない。そんなことよりこの小さな赤ちゃん犬は、足腰が弱いらしく、すぐによろけてころんでしまう。目は白っぽくうつろで、お皿にいれたミルクもそれほど飲まない。きっとこの犬は大きな病気をかかえている為に捨てられてしまったんだと思った私は、タウンページで獣医さんを探し、家から一番近いCOCO動物病院に電話をしてみた。状況を説明し、ミルクをあまり飲んでくれないと話すとなんと500円で簡単な健康診断ができるとのこと。小さな赤ちゃん犬に初めて触れた三時間後には、私は人生初の動物病院にいた。

 初めての動物病院で、目からうろこの先生のお話し。
 うまく立てないのは生まれてから1週間から2週間くらいだから。生まれてすぐは目は見えないもの。目の白っぽい膜はもうすぐとれて視力がはっきりしてくる。ミルクはお皿からではなく、哺乳瓶で。それも、牛乳ではお腹をこわすので猫用のミルクを。お母さんの犬がいないのでおしっこを促がしてあげること。その他ウンチの話や予防接種のこと、色々な事をとても優しく丁寧に教えて頂いた。
 初めてのことでわからないことばかりだけれど、不安な時はまたこの動物病院を訪ねればきっと大丈夫だと、とても心強く、ほっとした。

 その後約一週間、反対する主人を娘と二人で説得し、その小さな赤ちゃん犬を飼うことに成功。第一発見者の娘がその犬を‘はな’ と命名。 初めて出会った5月27日を誕生日にしている。今では主人も朝起きると一番にはなを抱っこするのが日課になっている。

 はなに出会った日はいくつかの偶然が重なっている。
 娘とけんかをして怒っていた私は、雨が降っているのにもかかわらず、娘を友達の家へ車で送っていくことをしなかった。もしあの時、車で送っていれば、小さな犬のキャンキャン鳴く声に気づくことはなかったはず。もし出会った犬がちゃんと歩けるくらい成長していて、目が見えているようであれば、私は決して家には連れ帰らなかった。当時私の家の周辺では、何頭か野良犬がいて、楽しそうに歩き回っていたから。そして何より、私は犬のにおいがどうしても苦手だった。

 30も半ばを過ぎ、私の価値観が今更こんなにも変わるなんて、犬が大好きになるなんて、想像もできなかった。もしや私は日々の生活の中で、自分自身が変わることのできるごくごく小さな出来事を、たくさんたくさん気づきもせず、見過ごしているのかもしれない。 
 片手にのる程の小さな赤ちゃん犬が私をこんなにも変えることができたのだから。  

Posted by cocoanimal at 00:00